「テレビ業界って、いつまでもつんだろう」と思うことが最近よくある。
「この仕事やめたいなぁ」とまで思う。
40代後半で出世しないことは確定したし、月に1回の夜勤もしんどくなってきた。VTRをチェックするニュースのデスク業務は、回し車の中を走るネズミのように朝から晩まで猛烈なスピードでこなしても終わらない。
ライフワークだったはずのドキュメンタリーの取材は1年以上前に頓挫し再開の見込みなし。頼みの綱の我らが親分・阿武野さんも、これを書いている時点で辞めるだの辞めないだのもはや本人にも分からないような状態で、なんだかどんよりした毎日だ。
そもそも業界全体が、視聴率も売り上げも右肩下がり。ここ数年とんと明るい材料がない。
すでに若手社員はこんなブツブツ言っている間に、見切りをつけてどんどん辞めていっている。
そんな時に、病院のドキュメンタリーをやることになった。名古屋の掖済会病院。
自分でも以前ニュースの企画で取材したことがあったけど、なんでこんな読みづらい漢字の病院名にしたんだろう、テレビ的じゃないんだよな…くらいの印象しかなかった。
撮影をスタートさせた足立ディレクターによると、どうやらERの人たちの働き方は我々と似ているらしい。
夜勤は月イチどころか月に4、5回もあって、モンスターペイシェントもまあまあ来る。救命の現場がゆえのプレッシャーも相当なのに、病院は「ケチサイカイ」というあだ名で呼ばれるほどお金にシビアなんだと。
おぉ…これは大変な職場だ。我々以上かもしれんぞ。
でも足立はニコニコ笑いながら「みんな結構楽しそうなんですよねぇ」と言う。
そういえば取材の前に挨拶に行ったときに、ERの北川喜己先生も「辞める人が少ないんですよ」と言ってたな。
その時は、医療関係はテレビと違って“つぶしがきく”職種だからだろうな…なんて思っていたが、何か違う気がする。
なぜこの人たちは留まっているんだろう?
それが今回のドキュメンタリーの個人的なテーマとなった。
その結果が今見てもらった、このドキュメンタリーだ。
つぎはぎで建て増した下町の病院。“働き方”的にも決してホワイトな職場ではないかもしれない。ERの置かれた立場は想像以上に低く、蜂矢医師も「転職活動中です」と言っていた。
でも、彼らはやめない。
結局なんでこの人たちはやってるんだろう…その時に浮かんだのが、コロナ真っ只中でイライラしている時に「大変ですね」と聞かれた蜂矢医師が、「だって来た時より悪くさせるわけにいかないじゃないですか」と返したシーンだ。
「来た時よりも悪くしない」それが仕事の役割、本分なんだ。それを自然に口にできる限り彼は勤め先を変えることはないだろうな、と何だか腑に落ちた。
医者が患者をよくするために働く、そりゃ当たり前といえば当たり前かもしれない。
でも…、じゃあ自分が聞かれたらなんというだろう。
「テレビの仕事、大変ですね」
「だって…〇〇じゃないですか」
その〇〇がすぐに思いつかない。
「社会のためになっているじゃないですか」いや最近では必ずしもそうとはいえない。
「娯楽として必要じゃないですか」いやYouTubeの方が規制がなくて娯楽度が高いぞ。
あえて絞り出すとするなら、
「だって…視聴率とれたら嬉しいじゃないですか」だ。自分たちのため。
そこで蜂矢医師からツッコミが入る。
「数字ばっか見てんなよ」。
うぐぐぐ…。
いま彼のように後輩に対して「数字ばっか見てんなよ」と言えるテレビマンが何人いるだろう。少なくとも今の自分は「数字ばっか見てる」状態だ。
『ヤクザと憲法』というドキュメンタリーで暴力団を取材した。
そこで知ったのは、ヤクザ組織というのはもともと行き場を失ったはぐれモノにとってのセーフティネットだったということ。そして、警察が介入しないような揉め事を仲裁したりして、地域から必要とされていた歴史だった。
それがいつしかラクして金を稼ぐのが仕事というようになり、仁義よりもどれだけ儲けているかがその組織の格になった。
結果としていま何が起きているか。構成員はどんどん減り、ヤクザは社会から退場する寸前のところまで来ている。
それは、警察の取り締まりが厳しくなったからだけではないだろう。
本分を忘れ、数字を追い求めたからだ、と思う。テレビもまたしかり。
掖済会病院の「掖済」は、わきに手を添えて、人を導き、助けるということだそうだ。
それを今でも彼らは本気でやっている。
いま、自分たちのやっていることの出発点が何かハッキリと言えて、自分がそれにキチンと関わっていると胸を張って言える人がどれだけいるだろう。
テレビやヤクザだけじゃない。
いろんなところが数字ばっか見てる状態になっていないか。
病院だって…。
あまりにも多くの組織やそこで働く人が、理由をつけてそもそもの成り立ちの意味を手放してしまっているように思う。
つぶしが効かないかどうかじゃない…なぜこの仕事をしているのかが、しっかりと腑に落ちているかどうか。それが見つかれば、自分の仕事にもちょっとは光が差してくるのかもしれない。
テレビの本分とは…そんなことを考えながら当面は回し車の中を走っていこうと思う。
全国屈指の荷揚げ量を誇る名古屋港から北へ3km地点にある名古屋掖済会(えきさいかい)病院。そのER(救命救急センター)は、救急車の受け入れ台数が年間1万台と愛知県内随一だ。24時間365日、さまざまな患者が運び込まれてくる。耳の中に虫がいると泣き叫ぶ子ども、脚に釘が刺さった大工職人、自死を図った人…。“断らない救急”をモットーに身寄りのないお年寄りから生活困窮者まで誰でも受け入れる。医師は言う。「救急で何でも診るの“何でも”には、社会的な問題も含まれる」と。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックで、救急車は連日過去最多を更新。他の病院に断られた患者が押し寄せ、みるみるベッドが埋まっていく…。
かつてない窮地に立たされたERのありのままを映し出すのは東海テレビのクルー。監督は本作が映画初挑戦の足立拓朗。プロデュースを手がけたのは『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』の阿武野勝彦と圡方宏史。医師たちは、ERの仕事を“究極の社会奉仕”と捉え、日々全力を尽くしている。一方で、外科や内科のように大学病院に支えられた医局制度がない救急科を志望する医師は少ない。ナレーションを排した映像が、映画を観る私たちを地域医療の近未来のカオスへと放り込む。
1948年11月、愛知県名古屋市中川区に開院。名古屋港から3kmに位置し、開院当初から洋上救急をはじめ救急医療に注力してきた。当時の診療科は内科と外科のみで、病床数は30床であった。1961年に救急センターを付設した本館が完成。高度経済成長期に入り急増した交通事故や工場での作業事故による救急患者に対応するため、1978年に東海地方で初めてのER(救命救急センター)を開設。現在では診療科36科、病床数602床を有し、救急車の受け入れ台数は年間1万台と、愛知県内随一の規模となった。救急医15人、看護師・救命士30人が在籍するERは「断らない救急」を掲げ、24時間365日、風邪などの軽症患者から心肺停止の重症患者まで、すべての初期診療を行っている。
夜勤にプレッシャーにクレーム対応
救急の現場はわたしたちの報道フロアと同じ匂いがする
でも彼らは辞めない
「楽しい」と言って出前の中華を嬉しそうにほおばっている
なんでだろう?
「断らない」というムチャなお題を掲げた病院の救命救急センターにカメラを入れてみたら、 組織にとって大切なもの、世の中から必要な存在でいるために絶対に手放してはいけないものが見えました。
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
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北海道札幌市 | シアターキノ | 011-231-9355 | 上映終了 2月24日(土)〜3月1日(金) |
備考 | |||
宮城県仙台市 | チネ・ラヴィータ | 022-299-5555 | 上映終了 2月23日(金・祝)~3月7日(木)予定 |
備考 | |||
山形県山形市 | フォーラム山形 | 023-632-3220 | 上映終了 3月29日(金)~4月4日(木) |
備考 | |||
福島県福島市 | フォーラム福島 | 024-533-1515 | 上映終了 7月27日(土)〜8月1日(木) |
備考 |
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
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神奈川県厚木市 | あつぎのえいがかんkiki | 046-240-0600 | 上映終了 6月7日(金)〜6月13日(木) |
備考 | |||
埼玉県深谷市 | 深谷シネマ | 048-551-4592 | 上映終了 6月2日(日)~6月8日(土) |
備考:火曜日休館 | |||
東京都中野区 | ポレポレ東中野 | 03-3371-0088 | 上映終了 1月27日(土)~3月1日(金) |
備考 | |||
神奈川県横浜市 | 横浜 シネマ・ジャック&ベティ | 045-243-9800 | 上映終了 2月24日(土)〜3月8日(金) |
備考 | |||
神奈川県川崎市 | 川崎市アートセンター | 044-955-0107 | 上映終了 2月24日(土)〜3月8日(金) |
*2/26(月)休映 | |||
千葉県柏市 | キネマ旬報シアター | 04-7141-7238 | 上映終了 3月2日(土)~3月15日(金) |
備考 |
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
---|---|---|---|
愛知県名古屋市 | ナゴヤキネマ・ノイ | 052-734-7467 | 上映終了 ☆オープニング上映作品☆ 3月16日(土)より公開 *火曜休館 |
備考 | |||
愛知県名古屋市 | イオンシネマ名古屋茶屋 | 052-309-4610 | 上映終了 6月14日(金)~7月18日(木) |
備考 | |||
愛知県刈谷市 | 刈谷日劇 | 0566-23-0624 | 上映終了 5月24日(金)〜6月6日(木) |
備考 | 静岡県静岡市 | 静岡シネ・ギャラリー | 054-250-0283 | 上映終了 2月23日(金)〜3月7日(木) |
備考 | |||
静岡県浜松市 | シネマイーラ | 053-489-5539 | 上映終了 3月29日(金)〜4月4日(木) |
備考 | |||
長野県松本市 | 松本CINEMAセレクト | 0263-98-4928 | 上映終了 3月3日(日)1日のみ上映 |
上映時刻:11:00より 上映会場:松本市エムウイング6階ホール | |||
富山県富山市 | ほとり座 | 076-422-0821 | 上映終了 3月9日(土)〜3月15日(金) |
備考 | |||
石川県金沢市 | シネモンド | 076-220-5007 | 上映終了 4月13日(土)〜4月18日(木) |
備考 |
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
---|---|---|---|
大阪府大阪市 | 第七藝術劇場 | 06-6302-2073 | 上映終了 2月3日(土)~2月23日(金・祝) *2/20(火)休館 |
備考 | |||
京都府京都市 | 京都シネマ | 075-353-4723 | 上映終了 2月16日(金)〜3月7日(木) |
備考 | |||
兵庫県神戸市 | 元町映画館 | 078-366-2636 | 上映終了 2月3日(土)〜2月16日(金) |
備考 |
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
---|---|---|---|
広島県広島市 | 横川シネマ | 082-231-1001 | 上映終了 3月16日(土)~4月5日(金) |
備考 | |||
愛媛県松山市 | シネマルナティック | 089-933-9240 | 上映終了 2月10日(土)~2月16日(金) |
備考 | |||
岡山県岡山市 | シネマ・クレール丸の内 | 086-231-0019 | 上映終了 4月12日(金)〜4月18日(木) |
地域 | 劇場 | 電話番号 | 公開日 |
---|---|---|---|
福岡県福岡市 | KBCシネマ | 092-751-4268 | 上映終了 3月8日(金)~3月14日(木) |
備考 | |||
大分県大分市 | シネマ5 | 097-536-4512 | 上映終了 2月24日(土)~3月1日(金) |
備考 | |||
大分県別府市 | 別府ブルーバード劇場 | 0977-21-1192 | 上映終了 4月19日(金)~4月25日(木) |
備考 | |||
熊本県熊本市 | Denkikan | 096-352-2121 | 上映終了 3月15日(金)~3月21日(木) |
備考 | |||
宮崎県宮崎市 | 宮崎キネマ館 | 0985-28-1162 | 上映終了 4月5日(金)〜4月11日(木) |
備考 | |||
鹿児島県鹿児島市 | ガーデンズシネマ | 099-222-8746 | 上映終了 2月10日(土)1日限定上映 |
備考 | |||
沖縄県那覇市 | 桜坂劇場 | 098-860-9555 | 上映終了 6月8日(土)~6月14日(金) |
備考 |
コメント
森達也(映画監督・作家)
重松清(作家)
井上咲楽(タレント)
梶原阿貴(脚本家・俳優)
冒頭の数分で、そんな思いが胸をよぎりました。
ここには誇張もなく、脚色もない。
医療現場の悲哀と情熱を浮き彫りにした、「命の砦」の記録です。
夏川草介(医師・作家)
犬養楓(救命救急医/歌人)
早く処置すれば救けられる、救けたかったと呟く若い医師の辛そうな表情、声が忘れられない。
この重責を担ってERに勤務する全てのスタッフに、心から感謝したい。
本当にありがとう。
あなたたちは僕らの命だけでなく、心も救っています。
乃木坂太郎(漫画家)
安達奈緒子(脚本家)
小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)
その後の『さよならテレビ』も同様に。「なにかおかしいんじゃないか?」…その眼差しは、そのままこちらに問い返されるかのようだった。
救命救急医療の現場を追ったこの作品もまた、コロナ禍以降、殊に浮き彫りになってきた現代社会の歪みをあらわにして、観るものに、あるべきそれぞれの姿を迫る。
なのに、まるで、昭和のヤクザ映画を観る高揚感にも似て涙がにじみもするのだ。
救急医療現場と報道現場は似ていると制作者たちは言う。 ならばこの映画は、魂の救済となるのかもしれない。
佐野史郎(俳優)