映画『その鼓動に耳をあてよ』映画『その鼓動に耳をあてよ』

映画『その鼓動に耳をあてよ』映画『その鼓動に耳をあてよ』

2024年1月27日より[東京]ポレポレ東中野ほか全国順次公開2024年1月27日より[東京]ポレポレ東中野ほか全国順次公開
音楽:和田貴史 音楽プロデューサー:岡田こずえ 
撮影:村田敦崇 音声:栗栖睦巳 TK:清水雅子 
音響効果:宿野祐 編集:髙見順
プロデューサー:阿武野勝彦 圡方宏史
監督:足立拓朗
製作・配給:東海テレビ放送 配給協力:東風
2023年|日本|95分|(C)東海テレビ放送
お問合せ:info@tongpoo-films.jp

「テレビ業界って、いつまでもつんだろう」と思うことが最近よくある。
「この仕事やめたいなぁ」とまで思う。
40代後半で出世しないことは確定したし、月に1回の夜勤もしんどくなってきた。VTRをチェックするニュースのデスク業務は、回し車の中を走るネズミのように朝から晩まで猛烈なスピードでこなしても終わらない。
ライフワークだったはずのドキュメンタリーの取材は1年以上前に頓挫し再開の見込みなし。頼みの綱の我らが親分・阿武野さんも、これを書いている時点で辞めるだの辞めないだのもはや本人にも分からないような状態で、なんだかどんよりした毎日だ。
そもそも業界全体が、視聴率も売り上げも右肩下がり。ここ数年とんと明るい材料がない。
すでに若手社員はこんなブツブツ言っている間に、見切りをつけてどんどん辞めていっている。

そんな時に、病院のドキュメンタリーをやることになった。名古屋の掖済会病院。
自分でも以前ニュースの企画で取材したことがあったけど、なんでこんな読みづらい漢字の病院名にしたんだろう、テレビ的じゃないんだよな…くらいの印象しかなかった。

撮影をスタートさせた足立ディレクターによると、どうやらERの人たちの働き方は我々と似ているらしい。
夜勤は月イチどころか月に4、5回もあって、モンスターペイシェントもまあまあ来る。救命の現場がゆえのプレッシャーも相当なのに、病院は「ケチサイカイ」というあだ名で呼ばれるほどお金にシビアなんだと。 おぉ…これは大変な職場だ。我々以上かもしれんぞ。
でも足立はニコニコ笑いながら「みんな結構楽しそうなんですよねぇ」と言う。
そういえば取材の前に挨拶に行ったときに、ERの北川喜己先生も「辞める人が少ないんですよ」と言ってたな。
その時は、医療関係はテレビと違って“つぶしがきく”職種だからだろうな…なんて思っていたが、何か違う気がする。
なぜこの人たちは留まっているんだろう?
それが今回のドキュメンタリーの個人的なテーマとなった。

その結果が今見てもらった、このドキュメンタリーだ。

つぎはぎで建て増した下町の病院。“働き方”的にも決してホワイトな職場ではないかもしれない。ERの置かれた立場は想像以上に低く、蜂矢医師も「転職活動中です」と言っていた。
でも、彼らはやめない。

結局なんでこの人たちはやってるんだろう…その時に浮かんだのが、コロナ真っ只中でイライラしている時に「大変ですね」と聞かれた蜂矢医師が、「だって来た時より悪くさせるわけにいかないじゃないですか」と返したシーンだ。
「来た時よりも悪くしない」それが仕事の役割、本分なんだ。それを自然に口にできる限り彼は勤め先を変えることはないだろうな、と何だか腑に落ちた。

医者が患者をよくするために働く、そりゃ当たり前といえば当たり前かもしれない。
でも…、じゃあ自分が聞かれたらなんというだろう。
「テレビの仕事、大変ですね」
「だって…〇〇じゃないですか」
その〇〇がすぐに思いつかない。
「社会のためになっているじゃないですか」いや最近では必ずしもそうとはいえない。
「娯楽として必要じゃないですか」いやYouTubeの方が規制がなくて娯楽度が高いぞ。
あえて絞り出すとするなら、
「だって…視聴率とれたら嬉しいじゃないですか」だ。自分たちのため。
そこで蜂矢医師からツッコミが入る。
「数字ばっか見てんなよ」。
うぐぐぐ…。 いま彼のように後輩に対して「数字ばっか見てんなよ」と言えるテレビマンが何人いるだろう。少なくとも今の自分は「数字ばっか見てる」状態だ。

『ヤクザと憲法』というドキュメンタリーで暴力団を取材した。
そこで知ったのは、ヤクザ組織というのはもともと行き場を失ったはぐれモノにとってのセーフティネットだったということ。そして、警察が介入しないような揉め事を仲裁したりして、地域から必要とされていた歴史だった。
それがいつしかラクして金を稼ぐのが仕事というようになり、仁義よりもどれだけ儲けているかがその組織の格になった。
結果としていま何が起きているか。構成員はどんどん減り、ヤクザは社会から退場する寸前のところまで来ている。
それは、警察の取り締まりが厳しくなったからだけではないだろう。
本分を忘れ、数字を追い求めたからだ、と思う。テレビもまたしかり。

掖済会病院の「掖済」は、わきに手を添えて、人を導き、助けるということだそうだ。
それを今でも彼らは本気でやっている。

いま、自分たちのやっていることの出発点が何かハッキリと言えて、自分がそれにキチンと関わっていると胸を張って言える人がどれだけいるだろう。
テレビやヤクザだけじゃない。
いろんなところが数字ばっか見てる状態になっていないか。
病院だって…。
あまりにも多くの組織やそこで働く人が、理由をつけてそもそもの成り立ちの意味を手放してしまっているように思う。

つぶしが効かないかどうかじゃない…なぜこの仕事をしているのかが、しっかりと腑に落ちているかどうか。それが見つかれば、自分の仕事にもちょっとは光が差してくるのかもしれない。
テレビの本分とは…そんなことを考えながら当面は回し車の中を走っていこうと思う。

圡方宏史

イントロダクション

救命救急の砦で、
いま何が起こっているのか?
観る者を近未来のカオスへと放り込む
迫真のドキュメント

全国屈指の荷揚げ量を誇る名古屋港から北へ3km地点にある名古屋掖済会(えきさいかい)病院。そのER(救命救急センター)は、救急車の受け入れ台数が年間1万台と愛知県内随一だ。24時間365日、さまざまな患者が運び込まれてくる。耳の中に虫がいると泣き叫ぶ子ども、脚に釘が刺さった大工職人、自死を図った人…。“断らない救急”をモットーに身寄りのないお年寄りから生活困窮者まで誰でも受け入れる。医師は言う。「救急で何でも診るの“何でも”には、社会的な問題も含まれる」と。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックで、救急車は連日過去最多を更新。他の病院に断られた患者が押し寄せ、みるみるベッドが埋まっていく…。

かつてない窮地に立たされたERのありのままを映し出すのは東海テレビのクルー。監督は本作が映画初挑戦の足立拓朗。プロデュースを手がけたのは『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』の阿武野勝彦と圡方宏史。医師たちは、ERの仕事を“究極の社会奉仕”と捉え、日々全力を尽くしている。一方で、外科や内科のように大学病院に支えられた医局制度がない救急科を志望する医師は少ない。ナレーションを排した映像が、映画を観る私たちを地域医療の近未来のカオスへと放り込む。

名古屋掖済会(えきさいかい)病院について

1948年11月、愛知県名古屋市中川区に開院。名古屋港から3kmに位置し、開院当初から洋上救急をはじめ救急医療に注力してきた。当時の診療科は内科と外科のみで、病床数は30床であった。1961年に救急センターを付設した本館が完成。高度経済成長期に入り急増した交通事故や工場での作業事故による救急患者に対応するため、1978年に東海地方で初めてのER(救命救急センター)を開設。現在では診療科36科、病床数602床を有し、救急車の受け入れ台数は年間1万台と、愛知県内随一の規模となった。救急医15人、看護師・救命士30人が在籍するERは「断らない救急」を掲げ、24時間365日、風邪などの軽症患者から心肺停止の重症患者まで、すべての初期診療を行っている。

WEBサイト▷
https://www.nagoya-ekisaikaihosp.jp/

メッセージ

  • 重傷患者を鮮やかに救う救急のドクター。ドラマの様なシーンが撮れると思っていざ取材に入ると、鼻の中のドングリを取ったり、酔っ払いの相手をしたり、治療費を払わない患者を説得したり…それでも、どんな患者にもプライドを持って向き合う彼らがいました。しかしその姿の多くは知られていません。新型コロナはこの国の医療の弱点を“丸はだか”にしました。作品を通じて、これからの医療に救急がどうあるべきなのか、考えるキッカケとなれば幸いです。

    足立拓朗(監督)

  • 夜勤にプレッシャーにクレーム対応
    救急の現場はわたしたちの報道フロアと同じ匂いがする

    でも彼らは辞めない
    「楽しい」と言って出前の中華を嬉しそうにほおばっている
    なんでだろう?

    「断らない」というムチャなお題を掲げた病院の救命救急センターにカメラを入れてみたら、 組織にとって大切なもの、世の中から必要な存在でいるために絶対に手放してはいけないものが見えました。

    圡方宏史(プロデューサー)

コメント

敬称略、順不同
  • これは東海テレビの新境地だ。まるで小宇宙のような救命救急センター内を、カメラが縦横無尽に動く。ここまで撮れるの? 透けて見えるコロナ禍の日本社会。ずっしりと重い。

    森達也(映画監督・作家)

  • 誰の鼓動なのだろう。誰でもいい。鼓動を聴き取る静寂をつくるために、ナレーションが退いた。はだかの紆余曲折、はだかのドキュメンタリー。東海テレビドキュメンタリー劇場第十五作――ここまで来たんだね。

    重松清(作家)

    *パンフレット原稿より
  • 「何でも診る」の“何でも”には社会的な問題までもが含まれているのか…と驚愕した。救命救急センターを通して、コロナ禍を含む近年の社会の縮図を一気に見ることのできる、心に残る作品です。

    井上咲楽(タレント)

  • 海外ドラマの名作『ER緊急救命室』のような感じだろうと思って見たら、その期待は大いに裏切られた。救急で運ばれてくる個性豊かな患者たちを通して、現代日本の抱える社会的問題が浮き彫りになってくる。底の抜けかけた社会の底を、ERの医師たちが懸命に支えている。

    梶原阿貴(脚本家・俳優)

  • 「これは現場の空気そのものだ」
    冒頭の数分で、そんな思いが胸をよぎりました。
    ここには誇張もなく、脚色もない。
    医療現場の悲哀と情熱を浮き彫りにした、「命の砦」の記録です。

    夏川草介(医師・作家)

  • 断らぬ救急現場が傾いた夜の重さを受け止めている

    犬養楓(救命救急医/歌人)

  • 断らない救急を掲げても病床が無くどうしても断らなくてはならない時もある。
    早く処置すれば救けられる、救けたかったと呟く若い医師の辛そうな表情、声が忘れられない。
    この重責を担ってERに勤務する全てのスタッフに、心から感謝したい。
    本当にありがとう。
    あなたたちは僕らの命だけでなく、心も救っています。

    乃木坂太郎(漫画家)

  • 救急医になることを一度も迷わなかった若い医師が、研修医として現場を経験し、迷う。迷わせた構造にドキリとなります。人間の全てを『診る』彼らの情熱とタフさは希望だけれど、翻って社会の脆弱さにおののきます。わたしたちも『見なければならない』と強く思います。

    安達奈緒子(脚本家)

  • 命は等しい。しかし現実は厳しい。満員の病床を背に、分刻みで選択を迫られるER。不景気、高齢化、パンデミック…すべてのしわ寄せが来る場所で、命と向き合う人たちが、どうか報われますように。

    小川紗良(文筆家・映像作家・俳優)

  • 東海テレビの連続ドラマに出演の折、同社ドキュメンタリー映画『ヤクザと憲法』を観、心奪われた。
    その後の『さよならテレビ』も同様に。「なにかおかしいんじゃないか?」…その眼差しは、そのままこちらに問い返されるかのようだった。
    救命救急医療の現場を追ったこの作品もまた、コロナ禍以降、殊に浮き彫りになってきた現代社会の歪みをあらわにして、観るものに、あるべきそれぞれの姿を迫る。
    なのに、まるで、昭和のヤクザ映画を観る高揚感にも似て涙がにじみもするのだ。
    救急医療現場と報道現場は似ていると制作者たちは言う。 ならばこの映画は、魂の救済となるのかもしれない。

    佐野史郎(俳優)

劇場情報

全国順次公開中

自主上映会募集中
2024年8月20日現在

上映会情報


北海道・東北

地域 劇場 電話番号 公開日
北海道札幌市 シアターキノ 011-231-9355 上映終了
2月24日(土)〜3月1日(金)
備考
宮城県仙台市 チネ・ラヴィータ 022-299-5555 上映終了
2月23日(金・祝)~3月7日(木)予定
備考
山形県山形市 フォーラム山形 023-632-3220 上映終了
3月29日(金)~4月4日(木)
備考
福島県福島市 フォーラム福島 024-533-1515 上映終了
7月27日(土)〜8月1日(木)
備考

関東

地域 劇場 電話番号 公開日
神奈川県厚木市 あつぎのえいがかんkiki 046-240-0600 上映終了
6月7日(金)〜6月13日(木)
備考
埼玉県深谷市 深谷シネマ 048-551-4592 上映終了
6月2日(日)~6月8日(土)
備考:火曜日休館
東京都中野区 ポレポレ東中野 03-3371-0088 上映終了
1月27日(土)~3月1日(金)
備考
神奈川県横浜市 横浜 シネマ・ジャック&ベティ 045-243-9800 上映終了
2月24日(土)〜3月8日(金)
備考
神奈川県川崎市 川崎市アートセンター 044-955-0107 上映終了
2月24日(土)〜3月8日(金)
*2/26(月)休映
千葉県柏市 キネマ旬報シアター 04-7141-7238 上映終了
3月2日(土)~3月15日(金)
備考

中部

地域 劇場 電話番号 公開日
愛知県名古屋市 ナゴヤキネマ・ノイ 052-734-7467 上映終了
☆オープニング上映作品☆
3月16日(土)より公開
*火曜休館
備考
愛知県名古屋市 イオンシネマ名古屋茶屋 052-309-4610 上映終了
6月14日(金)~7月18日(木)
備考
愛知県刈谷市 刈谷日劇 0566-23-0624 上映終了
5月24日(金)〜6月6日(木)
備考
静岡県静岡市 静岡シネ・ギャラリー 054-250-0283 上映終了
2月23日(金)〜3月7日(木)
備考
静岡県浜松市 シネマイーラ 053-489-5539 上映終了
3月29日(金)〜4月4日(木)
備考
長野県松本市 松本CINEMAセレクト 0263-98-4928 上映終了
3月3日(日)1日のみ上映
上映時刻:11:00より 上映会場:松本市エムウイング6階ホール
富山県富山市 ほとり座 076-422-0821 上映終了
3月9日(土)〜3月15日(金)
備考
石川県金沢市 シネモンド 076-220-5007 上映終了
4月13日(土)〜4月18日(木)
備考

近畿

地域 劇場 電話番号 公開日
大阪府大阪市 第七藝術劇場 06-6302-2073 上映終了
2月3日(土)~2月23日(金・祝)
*2/20(火)休館
備考
京都府京都市 京都シネマ 075-353-4723 上映終了
2月16日(金)〜3月7日(木)
備考
兵庫県神戸市 元町映画館 078-366-2636 上映終了
2月3日(土)〜2月16日(金)
備考

中国・四国

地域 劇場 電話番号 公開日
広島県広島市 横川シネマ 082-231-1001 上映終了
3月16日(土)~4月5日(金)
備考
愛媛県松山市 シネマルナティック 089-933-9240 上映終了
2月10日(土)~2月16日(金)
備考
岡山県岡山市 シネマ・クレール丸の内 086-231-0019 上映終了
4月12日(金)〜4月18日(木)

九州・沖縄

地域 劇場 電話番号 公開日
福岡県福岡市 KBCシネマ 092-751-4268 上映終了
3月8日(金)~3月14日(木)
備考
大分県大分市 シネマ5 097-536-4512 上映終了
2月24日(土)~3月1日(金)
備考
大分県別府市 別府ブルーバード劇場 0977-21-1192 上映終了
4月19日(金)~4月25日(木)
備考
熊本県熊本市 Denkikan 096-352-2121 上映終了
3月15日(金)~3月21日(木)
備考
宮崎県宮崎市 宮崎キネマ館 0985-28-1162 上映終了
4月5日(金)〜4月11日(木)
備考
鹿児島県鹿児島市 ガーデンズシネマ 099-222-8746 上映終了
2月10日(土)1日限定上映
備考
沖縄県那覇市 桜坂劇場 098-860-9555 上映終了
6月8日(土)~6月14日(金)
備考
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